日本で電子書籍が普及するために克服すべき6つの課題と1つの解決策を考えてみた。
日本における電子書籍の課題
来年自分でも出版社を作ろうと思っているので,電子書籍には関心があり,いろいろ考えています。しかし結論としては,現状の電子書籍は紙の書籍のおまけ程度にしかなれない,と思っています。
日本で電子書籍は普及しない,とよく言われています。その理由をいくつかピックアップするとこんな感じです。
・プラットフォームが乱立し過ぎで規格も統一されていない
・権利関係が複雑すぎる
・日本の電子書籍はまだまだ高い
・日本の紙の本はアメリカほど高くないし重くもない
・日米で本の制作と販売の仕組みが違う
・日本はアメリカと違ってそこら中に本屋があるから簡単に紙の本が手に入る
Kindle Paper Whiteが電子書籍の決定版と言われていますが,私はそれでもなお電子書籍は普及しないだろうと思っています。
なぜなら,電子書籍は,今はまだ本屋にある紙の書籍以上の読書体験を提供できないからです。
電子書籍における読書体験の課題
1 電子書籍は本の全文を試し読みすることができない
Amazonでは目次+αを試し読みできますが,本屋に行けば実物を手にとって全文を読んでから購入を検討できます。しかし電子書籍ではそれができません。買うか買わないかを検討するのにはやはり不便です。
2 電子書籍は「だいたいこのへんを読む」ことができない
電子書籍はページ番号を指定したりスライドすることでページを飛ばしたりできますが,紙の書籍と比べて「このような内容はこの辺に書いてあるはずだからその辺をぱっと開きたい」ということができません。たとえば,本を買うか決めるときに目次とまえがきとあとがきと著者のプロフィールと目次で気になった箇所をチェックする人はいると思いますが,電子書籍でそれらを紙の書籍と同じスピードでチェックするのはおそらく不可能だろうと思います。
さらに,求める情報の大体のイメージしかないときにそれを探すには本の目次などから推測して「だいたいこのへんかな」と開いてから,開いたページの内容からさらに「ここからこれくらい前/後にありそう」といった推測をして目的の箇所を探しますが,電子書籍ではこれがとてもやりにくいです。
3 電子書籍は「ざっと読む」ことができない
電子書籍は全ページをざっと読もうとすると,1回1回ページをスライドしていくしかありません。これで全ページを読むのはとても時間がかかるし,ページの表示にもタイムラグがあるし,何より指が痛いです。紙の本のようにばーっとページをめくっていくことができないと,概要を把握したり求める情報にたどり着くことができないことが多く,とても不便です。
4 電子書籍は「自分はどれくらい読んだか」という満足感を得にくい
紙の本だと,読んだページの厚さで自分はどれくらい読んだかがわかります。そして,たくさん読んでると「あ,もう少しで終わるな」といった満足感を得られます。しかし電子書籍だと,しおりを挟むことはできるものの,「もう少しで読み終わる」という感覚はあまり持てません。また,「厚み」という感覚も電子書籍にはあまりありません。
紙の書籍にはない電子書籍の読書体験
もちろん,電子書籍には紙の書籍にはない読書体験があります。列挙するとこんなところでしょう。
・検索ができる
・複数の端末で(書籍そのものだけでなく書き込んだメモなども)共有できる
・物理的スペースをとらない
・基本的になくならない
・暗くても読める
・本屋に行かなくても買える
・紙の本より軽いしかさばらない
・持ち歩けるから気になった時にすぐ読める
・活字だけでなく動画や写真などのリッチコンテンツを読める
・画面に触って動かしたりもできる
・他の電子書籍とリンクしたり辞書アプリなどと連携したりできる
・自炊する手間がいらない
確かにこれは便利です。個人的には物理的スペースがいらないことと持ち歩けるからいつでもチェックできることは非常に魅力的です。しかしそれでも今はまだ,紙の書籍の読書体験に軍配が上がると感じています。
電子書籍が普及するための解決策
電子書籍の6つの読書体験上の課題を書きましたが,その6つに共通することは,ほとんどがハードウェアの問題であるということです。ということは,解決策はごくシンプル。紙の書籍と同等の読書体験を提供するハードウェアを作ればよい,ということになります。
たとえば,こんな電子書籍端末はいかがでしょう。
とても薄い電子ペーパーを300枚束ねて紙の書籍のようにした電子書籍端末です。
表紙には,自分が読みたいと思った特定の一冊の表紙を指定して表示することができます。
表紙を開くと,自分が持つ本の表紙がずらっと並びます。そのページで書籍全体を対象としてキーワード検索をすることができます。
読みたい本の表紙をタップすれば,その電子書籍端末の電子ペーパーはその書籍の内容にすべて切り替わります。すべてのページが電子ペーパーに表示されているので,紙の書籍と同じ感覚で読むことができます。
だいたい100ページ目くらいを開くことも,ざっと全体に目を通すこともできます。
もちろんメモを書き込むこともできます。メモは電子ペーパーの中に情報として記録され,その本を呼び出せば一緒にメモも呼び出されます。
途中で読むのをやめるときは,付いている紐をはさめば自動的に読んだところを記憶してくれます。
自分が買っていない書籍は,裏表紙を開けば検索できます。
まだ買っていない書籍であっても,1ヶ月につき5分間だけすべてのページを表示させて読むことができます。
何百冊,何千冊持っていても,この電子書籍端末1つだけを持っていれば,いつでも好きなときに好きな本を読めます。
こんな電子書籍端末ができたとき,ようやく私は紙の書籍を捨てるでしょう。