会社における自分なりの人材教育方法まとめ


先日、秋葉原若手の教育関係の人が集まった教育勉強会(リンク先は主催者のid:showgotchの後日まとめ)(最終的な参加者は5名)があり、そこで発表したことをブログにまとめておこうと思います。
画像はパワーポイントのスライドをスクリーンショットで切り出したものです。ちょっと新しい感じがしたので試しにパワーポイントを使ってエントリーを書いてみます。私はスライド読むだけで何が言いたいのかわかるように作る派なので、スライドだけ追って文章はスルーしてもいいと思います。

自己紹介


自己紹介はまあ書いてある通りです。1年のうち7分の1くらいしか会社には行っていません。ロースクールの授業があるときは行けないからですね。普段は月に数回、春休みや夏休みにがっつり行く、といった感じです。

一般的な会社の人材教育のイメージ


これは完全に私の偏見ですが、「だいたい合ってる」んじゃないかと思っています。

・研修はいつも会社が用意したもので、丸2日かけて研修はしてみたけれど、その効果は1週間だけですぐに元通り。
・昇進の条件になってるからTOEICを受けてみる。でも英語でコミュニケーションはできません。
・「教育?現場で何とかしろよ」
・社長「仕事ができるやつを育ててくれ」 部下「(どんなやつやねん・・・)」


もちろんちゃんと人材育成に力を入れて成果を上げている会社もたくさんあると思いますが、そうではない会社もたくさんあるのではないでしょうか。ぜひどんな人材教育が会社でされているのか(もしくはされていないか)をはてブ等で教えていただけるとありがたいです。

教育とは何をすること?


そもそも「教育する」ということは「何をすること」なのでしょうか?勉強会には現役の先生もおられたので会場に質問を投げかけてみました。

@showgo「僕の価値観だとデザイン。設計。到達目標の設定と評価。」


おそらく、これは人によって答えが変わってくるものだと思いますが、私はこのように説明します。

教育とは、学習者が学ぶ手助けをすること。

教育する側は学習者の学びをサポートするだけで、それ以上のことはしてはいけません。もちろん教育のレベルにもよる(まったく何も知らない学習者にはとりあえずこれを覚えようね、とか)のですが、このことはほとんどの場合に当てはまると思います。
なぜかと言えば、スライドに引用してある『本を読む本』にあるとおり、「学ぶのは学習者自身」だからです。ちなみにこの本、非常に良いのでお勧めです。

本を読む本 (講談社学術文庫)
J・モ−ティマ−・アドラ− V・チャ−ルズ・ド−レン
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人材教育のプロセス


これは私が実際にやっていることを3つに分類したものです。

1.あるべき人材像を提示

まず「会社においてはどうあるべきか」を会社側から提示します。そしてこれはその組織の価値観(経営理念)とイコールであると同時に、この「あるべき人材像」は育てるべき人材が「そうなりたい」と思えるようなものでなければなりません。ですから、そもそも採用する時にその組織の価値観に共感できるような人材を集める必要があります。さらに、「あるべき人材像」を体現する人材は会社側が正当に評価する必要もあります。
言うは易し、なんですけどね。

2.あるべき人材像までの具体的なステップを提示

「あるべき人材像」というのは往々にしてもやっとしているものです。それでいて「こんな人材を目指してね!」と言ったところで、現場の人たちは何をしたらいいのかさっぱりわかりません。
これまた地味に難しい作業なのですが、具体的な行動で表現するとわかりやすいです。「リーダーシップを発揮する」ではなく、「社内の改善計画を自ら立てる」「それを実行する」といった感じでしょうか。

3.ステップごとに必要な研修を実施・定着

従業員さんが自力ではなかなか上がれないステップについては、会社で研修を用意します。この研修は外部講師に丸投げしてはいけません。なぜなら外部講師は内部の事情について知らないため、一般論しか語れないからです。研修は内部の問題を知っている人事担当者が自らデザインする必要があります(ただし法律等の知識系の研修は除く)。

具体的に私がやっていること

1.普段からのコミュニケーション

実は普段からのコミュニケーションが一番重要です。必ず問題は現場にありますから、人材教育の担当者は現場から問題をすくい上げてくる必要があります。また、コミュニケーションの中で「会社の中でどうあるべきか」という点を共有しておくのも大切です。私は年間に50日間ほどしか行きませんが、行った時には必ず受付の方とおしゃべりして、いろんなところからいろんな情報を手に入れるようにしています。

2.研修メニューの作成

現場から拾い上げてきた問題を解決するメニューを自分で作成します。本を読んだりして大体のものを作ってから、外部の講師さんと一緒に内容を詰めていきます。

3.研修の案内

コミュニケーションの一環ですが、いきなり研修をやるのかではなく「なぜこの研修をやるのか」を事前に周知しておきます。

4.研修の実施

研修は基本的に外部の講師さんに任せます。講師さんはしゃべるのは確実に私より上手ですし、「教育のプロ」という印象を持って見られるため聞く耳を持つ可能性が高いからですね。私は研修では講師の方がしゃべったことを会社のことに引き直して言い換えたり、といったことをします。

5.研修後のフォロー

研修で気づいたことや足りてなかったと思ったことを従業員さんにまとめてもらって、研修後数週間ほどしてから個別面談でフォローします。

6.レベルアップチェックシートで定着

会社の研修は往々にして「そのときだけ」になってしまいがちですが、確実に普段の業務に落とし込み、習慣化するために私が作ったのがレベルアップチェックシートというものです。これはいろんな概念や理論を組み合わせているためにすべて説明すると長くなるのですが、どういうものかを簡単に説明すると、「毎月具体的な目標項目を作っておき、毎日の業務のあとに従業員さんがセルフチェック(○か×をつける)して、社長に提出する」というものです。
具体的な目標項目というのは例えば、「お客様にあいさつする時には立ち止まってからする」と言ったものです。館内を移動しているときにお客様を見かけることがあればあいさつするのですが、移動しているときにいったん立ち止まってからあいさつすることはなかなか容易ではありません。しかしこれができるとかなり印象が違います。こういった「ちょっとしたことなんだけれどできればすごい」ことを「具体的な行動の形で項目化」することで、客観的に評価できる(つまり誰が見てもできてるかできてないかが評価できる)ようにしています
これを毎日チェックすることで、確実に業務のレベルを、従業員さんが自ら上げていくことが可能です。

もともとこれは私が会社にほとんどいられない&社長が忙しすぎて人材教育のほうに手が回らないということから開発したものですが、結果的にかなりうまくいっている仕組みだと思っています。従業員さんが自らチェックシートを社長に提出することで社長とのコミュニケーションが生まれ、普段現場をほとんど見られない社長が現場のことを把握することができる、という効果もあります。そして、社長との対話の中で従業員に経営理念が浸透するという役割も果たしています。

会社はどう変わったか?


私はたまにしか会社に行かないので、逆に変化があればすぐに気づくことができるのですが、以上の仕組みを取り入れたことで会社の雰囲気が変わりました。扉を開けて入った瞬間に「あ、なんか以前より明るくなった」といったことがわかるのです。
また、職場の雰囲気が良くなったせいか、仕事上のミスが減りました。お客様のクレーム(トラブルと呼んでいいレベルのもの)は年間数件あるかないかくらいです。
具体的に測定はできていませんので感覚的なものになりますが、結果的に顧客満足度従業員満足度も上がったと感じています。

アインシュタインの言葉をスライドの中に引用したのは、「顧客満足度従業員満足度を上げようとして直接それらを何とかしようとしてもうまくいかないよ」ということを言いたかったからです。満足度やモチベーションといったものは結局「人」に尽きます。「人」が成長すれば、いつの間にか問題は消え去っていくということを実感しています。

この人材教育法のおかげかどうかは分かりませんが、弊社はリピーター率が7割超となっております。

組織における人材教育まとめ

組織における人材育成担当の仕事とは、従業員が「自ら育つ環境を作る」こと。

これが、私が会社にいるときに心がけていることです。従業員さんの能力を開花させられるような土壌を作る。そのために必要な信頼関係を築いたり、自発性の芽を伸ばしたりするのが私の仕事です。



そしてこれは教育一般についても言えることなのではないでしょうか?
教育について語られるときに「何を教えるか」「どうやって教えるか」だけではなく、「自発的に学習者が学びたくなるような環境づくりをするためにはどうしたらいいか」がもっと語られるようになればいいな、と思っています。


なお、もしこのエントリーの内容に興味がある方がいらっしゃったら、こちらのアドレスまでどうぞ。別に私は経営コンサルタントではありませんので、いくらでもお話しさせて頂きます。