「サービスとは何か?」について考えてみる。


僕が取締役を務める会社の業務形態は、いわゆるサービス業に属します。そして顧客サービスを考えて具体化する、または現在のサービスの問題点を指摘して改善策を出したりするのが僕の仕事のひとつだったりします。
したがって「もっとお客様に満足していただけることはないか?」「顧客満足とは何か?」みたいなことはずっと考えています。


いろんな本を読んだり考えたりした結果まとまった、今僕が考えるサービスというものについて書いてみようと思います。

「サービスとは何か?」


いきなり本題です。

さて、この問いに即答できる方はおられますか?別に「サービスとは何をすることか?」でも構いません。

もし説明できないのなら、それはわかっていないということです。「○○のことくらい当然わかってる!」と言う人に「じゃあ○○って何?」と聞くと、言葉に詰まって答えられなかったりします。
僕がわかってないな〜と感じる人に対してよく使う手です(笑)



では、自分なりの答えを用意した上で、続きをご覧ください。










サービスとは、お客様に満足していただくために、自分のもてるものを活用して何かをして差し上げること


サービスの究極の目的は何かと言われれば、「お客様に満足していただくこと」以外にはありません。
そしてサービスというのは自分がコントロールできる有形・無形の両方、すなわち自分の能力や気遣いなどを総動員してするものです。
さらに、サービスは積極的な行為である必要があります。何もしないということ自体がサービスになるということは、全くないとは言いませんが、ほとんどありません。


この定義から引き出せる意味はたくさんあるのですが、そのうちのいくつかについて述べてみたいと思います。

  1. お客様は常に正しい
  2. 「お客様がどう思うか」「これはお客様が望んでいることなのか」という問いかけが、サービスにおける意思決定の唯一の基準
  3. お客様が買うのは「サービス」であって、物だけではない

挙げようと思えばもっと挙げられますし、このひとつひとつについてだけでも1エントリーが書けるくらいなのですが、ざっと簡単に説明してみます。

1.お客様は常に正しい


これはクレームとの関係で問題になります。しかし原則としてはお客様は「常に」正しいと考えていなければなりません。最初から疑ってかかるような心構えでいると、ほぼ確実に事態を悪化させます。


ついでにどのような場合にお客様をお客様扱いしなくていいかの基準を書いておきます。

お客様として扱わないでいい場合=対応しているお客様が期待していることが、企業や他のお客様の利益にならないことが明らかな場合

「お客様は常に正しい」ので利益にならないことが「明らかな場合」でないといけません。

具体的にどんな場合かというと、

  • お客様が対価以上のものを求める
  • 従業員が他の顧客に対応することを長時間にわたって不可能にする

といった場合です。

2.「お客様がどう思うか」「これはお客様が望んでいることなのか」という問いかけが、サービスにおける意思決定の唯一の基準


これは逆に言えば、「お客様がどう思うか」「これはお客様が望んでいることなのか」以外の要素を意思決定の際に考慮してはいけないということです。たとえ社長の命令であっても、それがお客様の意思に反するならば従ってはいけません。

これについては「人件費等のコストや手間を考慮していない」といった反論が考えられます。
しかし値段とお客様の期待というのは大体比例するものであり、値段は人件費等のコストを考慮した上で決定しているのだから、この批判は当てはまりません。
お客様は安いものにはそれほど期待しないし、高いものにはそれだけの期待をするのですから。


「これはお客様が望んでいることなのか」ということを考えるにあたっては、注意しなければならないことがあります。
それは、「これをお客様が望んでいるはずだ!」と考えてしまい、ただの傲慢に陥ってしまうことです。このような考え方は単に企業側の考えを押しつけているだけです。したがって、常に「このサービスは本当にお客様が望んでいることなのか」という問いかけをする必要があります。

3.お客様が買うのは「サービス」であって、物だけではない


ある商品を買う時に最も考慮されるのは値段かと思います。そして実際に値段「だけ」を見て買うという人は、世の中にたくさんいます。しかしそんな経済的に合理的な人でも、他に安い店があることを知りながら少し高い物を買うことがあります。
その理由はその店の品揃えであったり、立地であったりといった物的要素が原因であることもありますが、多くは「従業員のサービスによって満足感を与えてもらったから」です。

お客様が出そうと思う値段=その物の価値+従業員の無形のサービスを加えた額

なんですね。

  • デパートの商品がなぜ高いのか。

僕は仕事柄デパートで売ってる着物の卸値なんかは知っているのですが、20万で売ってる振袖なら大体5万くらいが卸価格です。15万が粗利となります。
なぜデパートの商品が高いかといえば、豪華な内装等が作る雰囲気というのももちろんありますが、それ以上に従業員の教育や商品選定に手間をかけたりしており、その結果お客様の満足度が高くなっているからです。

  • ホテル業というのは、究極のサービス業です。

なぜなら「売る物がない」からです。ホテルの施設を除けば無形のサービスだけでお金を頂くわけですから、当然お客様に来ていただくためにサービスの向上に全力を傾けることになります。

おそらく日本で一番顧客単価が高いホテルは、リッツ・カールトンでしょう。ちなみに一番安い部屋は¥39000で、税とサービス料を足して¥46273です。しかもこのサービス料が13%なんですね。帝国ホテルやホテルオークラでさえサービス料は10%ですから、自信のほどがうかがえます。
僕は以前リッツカールトンでバイトをしていたことがあり、そのときの話も色々とあるのですが、これはまたいずれ書いてみたいと思います。

  • どっかの食肉会社の社長の「客が安いものばかり求めるから悪いんだ」という発言

これはお客様が値段「だけ」を求めていると考えてしまっているからです。売る側が値段を下げること=サービスと考えてしまえば、買う側も安さを求めるようになります。
値段というのは確かに大事な要素ですが、信頼やちょっとした親切・気遣いがあるだけで、お客様は少しくらい高くても買ってくれるのです。



弊社の社長は、値段「だけ」を見て商品の良さをきちんと理解してもらえない方には、来ていただかなくていいという方針をとっています。だから弊社の商品の値段というのは業界の中でもかなり高いです。そのせいで会社設立当初は大変な赤字でしたが、現在ではリピーター率が6割を超え、顧客数も伸び続けています。
ただ実はこの先どうするかについては僕と社長で対立するところもありまして、職人肌な社長は例えば「お客様は常に正しい」という考え方にはあまり賛成しません。そして僕は商品自体の品質を上げることも大事だけれど、それより無形のサービスの質をさらに高めることも考えるべきと主張しています。

職人的なこだわりと顧客満足のどちらを優先するか。これは僕自身これからまだまだ考えていかないといけないところです。


最後に、サービスに関して僕がいいと思った本を紹介したいと思います。僕のサービスに対する考え方を変え、さらには普段の行動までも変えてしまった本です。
アメリカのノードストロームというデパートの役員であるベッツィ・A. サンダースが「伝説のサービス」について語った本です。サービス業に従事する人だけでなく、人間関係をより良くするためにどうすればいいか、などについて考えている人にも非常に参考になるかと思います。


サービスが伝説になる時―「顧客満足」はリーダーシップで決まる
ベッツィ・A. サンダース
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 24283
おすすめ度の平均: 4.0
4 サービス関係以外の人にもお薦めです
4 もしこれが本当なら、日本は警戒が必要
5 良書です。
4 経営者と従業員という区別は気になるが、分かりやすい啓蒙本
4 この本は近く見直されると思う。




確かこの本に書いてあった名言を。

他人に奉仕することほど高尚な信仰はない。多くの人々の福利のために働くことは、最も偉大な信仰である

−アルベルト・シュヴァイツァー