大麻を規制すべきたったひとつの理由


最近大麻の売買や栽培で逮捕されている人が続出しています。それに対しネット上では大麻を合法化すべきという議論も盛んにされていますが、正直に申し上げて現実に大麻というものがどういうものかを知らない人(最も立法者も知っているかは疑問ですが)が何となく規制に反発しているだけという印象しか受けません。


まず、現在の日本の大麻についての法規制について簡単にまとめてみます。

大麻に関する法規制


日本では大麻の取り扱いについては大麻取締法によって規制しています。

大麻取締法大麻をどうすることについて規律しているのかというと、


第三条  大麻取扱者でなければ大麻所持し、栽培し、譲り受け譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。
2  この法律の規定により大麻を所持することができる者は、大麻をその所持する目的以外の目的に使用してはならない。

第四条  何人も次に掲げる行為をしてはならない。
一  大麻を輸入し、又は輸出すること大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く。)。
二  大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
三  大麻から製造された医薬品の施用を受けること。
四  医事若しくは薬事又は自然科学に関する記事を掲載する医薬関係者等(医薬関係者又は自然科学に関する研究に従事する者をいう。以下この号において同じ。)向けの新聞又は雑誌により行う場合その他主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、大麻に関する広告を行うこと


ここで大抵マスコミで話題になっているのは、上記の3条と4条に該当する場合です。上記条文のうち「大麻取扱者」や「大麻研究者」というのは都道府県知事から大麻を取り扱ったり研究したりすることについて免許を受けている場合ですので、捕まる人はそんなもの持っているはずがないため無視してください。

すなわち、日本では

大麻の所持・栽培・譲受けまたは譲渡し・研究のための使用・輸入または輸出・大麻に関する広告


が禁止されているということです。


一方、覚せい剤については覚せい剤取締法が規制していて、

(この法律の目的)
第一条  この法律は、覚せい剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、覚せい剤及び覚せい剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締を行うことを目的とする。


すなわち、覚せい剤については

覚せい剤及び覚せい剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用


が禁止されているわけです。

大麻覚せい剤、何が違うか?


覚せい剤はケシを育ててそこから化学的工程を経て抽出するため、条文に「栽培」という項目は入っていません。条規の文言には「広告」が入っていませんが、覚せい剤取締法の別の条文で規制しています。


一番大きな違いは、覚せい剤の「使用」は禁止しているけれど、大麻の「使用」は禁止していないことです。*1

昔は使用についても禁止していたそうなのですが、昭和23年の法改正に伴いなぜかなくなったそうです。
(参考:大麻取締法の生い立ちを考える・その16−大麻の使用罪 - 弁護士小森榮の薬物問題ノート)


つまり、最近の大麻関連の逮捕は「栽培」や「譲渡し」によって逮捕されているのであって、「使用」で逮捕されている人はいないのです。横で吸っている人にちょっとだけ吸わせてもらう(万全を期すなら自分は大麻に触らずに吸わせてもらう)のならば、違法ではないということですね。


以上のように日本では大麻は規制されているわけですが、この規制は解除すべきか。


私はこのまま規制を続けるべきと考えます。

大麻を規制すべきと考えるたったひとつの理由


私が大麻を規制すべきと考える理由は、

大麻を自由に譲渡でき、大麻を吸っている人が街にあふれているという社会が嫌だから


です。

このブログでは何回か書きましたが、かつて私はジャマイカに滞在していたことがあります。
ジャマイカでは大麻(現地では「ガンジャ」というのが一般的)は違法です。*2しかし街中では普通に吸っている人がたくさんいます。
ジャマイカで何かを吸っていたら、ほぼ間違いなくそれはガンジャです。私はたばこを吸っている人(というかたばこ自体)を見たことがありません。


ガンジャを吸っている人は目がとろんとして充血し、焦点が合わなくなります。そして大抵言動も怪しくなります。


あなたが日本人ならば、ジャマイカの首都キングストンの繁華街・ハーフウェイツリーを1キロほど歩くと「Hey,Mr.Chin!*3」と何度か声をかけられることでしょう。声をかける人は、ほぼ間違いなく目をとろんとさせ、白い紙で巻いたガンジャを吸っています。


大麻の合法化を主張する人は大麻に習慣性がない・たばこほど毒性もないなどをその論拠とします。しかし仮にそうだとしても、たばこは吸っても何も変わりませんが、大麻を使用する人は現実に普通の状態ではなくなるわけです。

あなたは渋谷で若者が大麻を吸いながら目をとろんとさせてたむろする社会にしたいと思いますか?



立法とは、国民が国会を通じて法律を制定し、国をどのようなものにするかという権力的行為です。

大麻を吸いたい人が自由に吸える国にしたいという人もいるでしょうし、逆に自由に大麻を吸っている人が街中にあふれることで治安が悪化することを懸念する人もいます。


大麻について議論するならば、大麻の規制を解除することで日本をどんな国にしたいのかを念頭に置くべきかと思います。

*1:研究目的の使用が禁止されていますが、研究目的でない使用は禁止されていません

*2:具体的に何が違法になるのかは知りません

*3:アジア系の人に対する呼びかけの言葉