超一流刑事弁護人に学ぶ、11の上手な「教え方」まとめ 【刑事弁護実務の講義ノート付き】


このたび、後藤貞人弁護士(大阪弁護士会)・神山啓史弁護士(第二東京弁護士会)・遠山大輔弁護士(京都弁護士会)・陳愛弁護士(大阪弁護士会)という日本屈指の刑事弁護人のもとで刑事弁護実務の基本を学ぶ機会をいただきました。
後藤貞人弁護士は「後藤先生で無罪判決取れなかったら仕方ない」と他の弁護士に言わしめるほどのプロ中のプロです。陳愛弁護士は後藤貞人法律事務所で一緒に刑事弁護をしておられます。神山啓史弁護士は足利事件(無罪確定)等の著名な再審請求にたずさわっておられます。遠山大輔弁護士は、Winny事件や舞鶴女子高生殺害事件を担当されました。
このような大阪・京都・東京のトップクラスの刑事弁護人に直接刑事弁護を教えてもらえる機会はなかなかないと思います。

5日間の集中講義(90分×14コマ)でしたが、逮捕直後から最終弁論まで、刑事弁護の基本を徹底的に叩きこんでいただきました。その内容をiPadでノートにまとめましたので、刑事弁護をより広く知っていただくという趣旨から公開いたします。弁護士が逮捕→勾留→起訴→公判という刑事手続の流れの中で何をするのか、なぜそのようなことをするのかについての超一流刑事弁護人のエッセンスが詰まっています。刑事弁護に興味ある方はぜひご覧ください。


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さて、本エントリーの主眼は講義の内容ではなく、超一流刑事弁護人の「教え方」にあります。彼らは教える内容も超一流ですが、教え方も超一流です。私自身、従業員教育や法学教育に興味を持っており、日々「上手に教えるにはどうしたらいいか?」について考えています。そこで、私が気づいた彼らの上手な教え方の11のポイントをご紹介します。教える立場にある人すべてにきっと役立つと思います。

【目次】

Point1 「今から何について話すのかを最初に明示する。」
Point2 「大事なことは何度でも・形を変えて言う。」
Point3 「結論を先に、結論と理由は必ずセットで説明する。」
Point4 「抽象的な概念は具体例に即して説明する。」
Point5 「最後にまとめを入れる(PREP法のスタイルを守る)。」
Point6 「理由の説明やアドバイスの内容は、原理原則から導く。」
Point7 「学生に素早く試行錯誤をする機会を提供する。」
Point8 「フィードバックを上手に返す。」
Point9 「十分な下準備がされている。」
Point10 「学生への敬意を持つ。」
Point11 「Point1からPoint10までが常に徹底されている。」
なぜ刑事弁護人は教えるのがうまいのか?
最後に〜教育における構造上の問題点〜

Point1 「今から何について話すのかを最初に明示する。」


私のノートを見ていただくと、まず最初に神山先生が集中講義の目的とやり方をお話していることがわかると思います。すなわち、これから5日間で何をやるかを最初に宣言しているわけです。最初だけでなく、何かを解説しようとするときには、「今から□□についてお話します。」とおっしゃっていました。また、学生に対してコメントするときも、まず最初に「こうすればよかったな、と感じたところが2点あります。○○と××です。」というように、今から○○と××について話すということを明示していました。

こうするとなぜ良いのか?

最初にこれから話す内容を示してもらえると、聞き手は何について注意して聞けばよいのかがわかります。すると、集中すべきポイントとそうでないポイントの判断ができるため、的確に話の内容を把握できます。また、メモも非常に取りやすいです。大学の教員に割と多いと思いますが、「何か話をしているが、今、どのテーマについて話しているのかがさっぱりわからない」という人がいます。これから話す内容を最初に示すことで、このような事態を防ぐことができます。

Point2 「大事なことは何度でも・形を変えて言う。」


今回の講座で大事なことは、刑事弁護人の職業訓練として「自分で事実とそれを支える証拠を集めること」でした。このことは、5日間を通じて何度も何度も言われました。ノートを見てもそれはわかります。一度や二度ではありません。形を変えて、軽く20回以上言っていると思います。ノートから「事実を集める」という点に絞っていくつか例を拾っています。

「とにかくたくさん事実を集めることが大事」
「まずは虚心坦懐にすべてを教えていただくことが大事」
「質問の基本は1クエスチョン・1ファクト(以上、事情聴取でのコメント)」
「感想ではなく事実を聞いて欲しかった。証人の感想は聞く必要なし。とにかく事実を言ってもらう。」
「1回目はどういったか、2回目はどういったか、今回はどう言ったか、さえ言わせられれば、違うという事実は揃う。あとは弁論で違いをいえばいい。違うことを弁護人から問うと、押し付けているように見える」
「一番大事なのは事実。事実に基づいて評価するので、事実を聞き取る。」
「体験した事実を聞くこと」
「質問の中に自分の弁論や自分の意見を挟んではいけない」
「質問者の狙いは質問から徹底的に排除しなければならない(弁護人はこういうことが聞きたいんだな、とわかるような聞き方はダメ)(以上、証人尋問でのコメント)」
「共感できるのは事実と証拠だけ」
「事実と証拠を共有することを貫徹する(以上、最終弁論でのコメント)」


以上は1日目と2日目の分(の一部)だけです。同じことを3日目と4日目にもやっているので、トータルでは何回言われたかわからないくらいです。

こうするとなぜ良いのか?

何度も同じことを言われると、聞き手は「これはとても大事なことだ」ということがわかります。逆に、一度しか言われなかったことは、「これは大事だ」と言われたとしても、どの程度大事なのか、なぜ大事なのかがよくわからないのでなかなか「これはとても大事なことだ」と思うことはできません。

教えた人が「ここは大事だって言ったじゃないか!」と言うことがあります。また、「大事なこと」というのは往々にして「基本的なこと」であることが多いです。しかし、大事なことは一度言っただけではほぼ確実に聞き手に伝わりません。「基本=簡単なことなんだから何度も言う必要はない」という考え方は大間違いといってよいでしょう。同じことを何度も、しかも形を変えて説明することで、初めて「大事なこと」は理解できるのです。

Point3 「結論を先に、結論と理由は必ずセットで説明する。」


先生方はまず結論から言います。そして、その後に理由を説明します。こんな感じです。

5W1Hに即して質問しましょう。なぜなら、もれなく、事実だけを確実に聞き出すことができるからです。」
「弁護人が調書の問題を解説しているが、聞き手には何が問題かわかりません。なぜなら、ストーリーを語っていないからです。」
「これまで法律の世界では、反省は弁護側のプラス事情でした。しかし、裁判員裁判ではそれはなぜか?を説明できることが重要です。なぜなら、裁判員にとっては「悪いことをしたのだから反省するのが当たり前」だからです。」

こうするとなぜ良いのか?

「Point1 今から何について話すのかを最初に明示する」にも通じる話ですが、結論を先に言ってもらうと聞き手は聞きたいことをすぐに聞けるので安心します。質問を受けて返答するときに、まず結論を指摘することは非常に質問者にとって見通しが良くなります。これは司法試験の答案やビジネス文書を書くときも同様です。
逆に理由を先に説明すると、結局どうなのかというところがなかなかわからず、意図が伝わりにくくなることがあります。また、結論だけを述べても、理由がわからなければ他の場面で応用が効かず、その場限りのものとなってしまいます。
結論を先に、その後に理由を説明するというパターンを守るだけでも、聞き手にとってはずいぶんわかりやすいものになると思います。

Point4 「抽象的な概念は具体例に即して説明する。」


先生方は、何か抽象的な概念を説明した時には必ずその後に「たとえば〜」と具体例を続けます。

「反省していると言うこと自体には何も意味がない。反省した結果どう行動が変わったかに意味がある。たとえば、反省文を書く、被害者への賠償、今後酒を飲まない、といった行動の変化が説得力を持ちます。」
「質問は1クエスチョン・1ファクトで聞く。たとえば、「保釈の日はお父さんは誰に聞いていつどこへどのようにして行ったか?」という質問には多くの事柄が含まれている。「息子が保釈されたことは誰から聞きましたか?」「それは何時のことでしたか?」「聞いてからどこへ向かいましたか?」「どのような手段で行きましたか?」と聞けば、聞かれた方も答えやすい」


といった具合です。

こうするとなぜ良いのか?

人はなかなか抽象的な概念をすぐには理解できません。身近な具体例はすぐに理解できるので、具体例を示してもらえれば、具体と抽象がリンクして抽象を理解できるようになります。そして、具体と抽象を行き来することで、抽象的な概念に対する理解を深めることができます。また、抽象的な概念はその抽象性ゆえに、言葉の指す対象が話し手と聞き手で食い違っていることがあります。このような食い違いを防ぐためにも、抽象と具体は必ずセットで説明することは大切です。

Point5 「最後にまとめを入れる(PREP法のスタイルを守る)。」


私のノートの中で四角で囲っている部分がまとめです。たとえば、事情聴取の基本についてのまとめが以下です。

【事実聴取の基本】
基礎となる事実を把握し、その事実を支える証拠を集めるのが基本
事実を聞く時は誘導してはいけない(←記憶の誤導のおそれ、被疑者は誘導されやすい(弁護士には権威がある))
緊張していたら緊張をほぐす←緊張している原因を探る(取り調べが厳しいのか、反省してるのか、知的能力に問題があるのか)
とにかく事実を聞き取ること
最初から大事な事実が何かはわからない(絶対に決め付けてはいけない)
最初は幅広く聞くこと
弁護人の仕事は、裁判所と検察官の要件該当判断を、吟味検討する・証拠集め
裁判官は証拠があれば説得されるが、口だけでは説得されない


他にも主尋問や執行猶予をとる弁護の方法、接見での話の聞き方、冒頭陳述、被告人質問、反対尋問についてのまとめがあります。

こうするとなぜ良いのか?

「Point3 結論を先に、結論と理由は必ずセットで説明する。」「Point4 抽象的な概念は具体例に即して説明する。」と合わせて見ると、集中講義の構成だけでなく、コメントひとつとっても結論→理由→具体例→結論というスタイルで貫かれています。これは英文を書く時によく指導されるPREP法*1というスタイルです。このスタイルは長い時を経て磨きぬかれた、メッセージをわかりやすく伝えるスタイルであり、また広く知られているので、このスタイルを忠実に守るだけで、的確に相手に伝えることができます。

Point6 「理由の説明やアドバイスの内容は、原理原則から導く。」


先生方は、あるルールの説明やアドバイスをするときには、以下のように原理原則から敷衍します。

「主尋問で誘導尋問が禁止されているのはなぜか?
それは、記憶が書き換えられるおそれがあるからだ。
では、誘導質問で書き換えられた記憶が真実ならいいのではないか?
そうではない。真実は神にしかわからない、わからないからこそ当事者双方の立場から争って裁判官が判断するという当事者主義という構造を刑事訴訟法はとっている。すなわち、主尋問における誘導禁止は当事者主義の根本につながるルールなのです。」


後藤先生は、このように刑事訴訟法の当事者主義という原理から、主尋問における誘導尋問禁止というルールを説明していました。

こうするとなぜ良いのか?

原理原則から理由を説明してもらえると、応用が効きます。すなわち、「なぜそのような理由が導かれるのか」という「理由の理由=原理原則」がわかるようになるので、他のケースでも原理原則から考えることができるようになるのです。これは、「Point4 抽象的な概念は具体例に即して説明する。」で書いた「抽象と具体を行き来する」ことにも通じる話です。つまり、より深く原理原則を理解することにもつながるというメリットがあります。
さらに、上記の例で大切なことは、後藤先生が単に「当事者主義の根本につながるルール」と原理原則を示すだけでなく、当事者主義とは何か、という内容と、なぜ誘導尋問禁止のルールが当事者主義につながるのかを説明しているところです。このような説明ができれば、まったく刑事訴訟法の知識がなくとも理解できるでしょう。「どうせ知っているだろうから言わなくていいだろう」ではなく、少しでも聞き手にわかってもらうために、「当たり前のことも丁寧に説明する」ことを心がけることは大切でしょう。

Point7 「学生に素早く試行錯誤をする機会を提供する。」


「素早く試行錯誤する機会を提供」という言葉には、3つの意味があります。
1つ目は、「試行錯誤する機会を提供する」ということです。集中講義は、終始ロールプレイング形式で行われました。すなわち、接見や公判での尋問、弁論を学生が実際にやってみるというスタイルです。4班にわけ、1つの班がロールプレイをした後、先生がコメントして、また次の班が同じことをするというやり方でした。さらに、「〜をするのはなぜなのか」「あなたはどう思うか」と常に問いかけ、学生に考える機会を与えていました。
2つ目は、「試行錯誤自体を素早くできるようにする」ということです。たとえば、各班のロールプレイは3分に限定し、コメントを含めて5分程度で1つの班が終わって、また次の5分で次の班がやる、というようにしていました。また、学生に先生が質問をしたとき、学生がすぐに答えられなかったら、質問を変えたり質問の趣旨を説明したりして、学生が黙ったまま時間がすぎることのないようにしていました。
3つ目は、「フィードバックをできるだけ早く返す」ということです。たとえば、4班にひと通りロールプレイをしてもらってからコメントするのではなく、各班が終わった後すぐにコメントする、最終日の試験終了後すぐに試験の講評をし、採点基準を明かすといった具合です。

こうするとなぜ良いのか?

試行錯誤をする機会が与え、しかもそのサイクルを素早く回せると、学習速度が非常に高まります。なぜなら、前回の試行錯誤を踏まえてさらに次の試行錯誤をすることができるので、同じミスをしなくなるだけでなくよりレベルの高い事柄に挑戦することができるようになるからです。
私が通っていた法科大学院の講義は教員と学生の問答により進めるソクラテスメソッド方式で行われていました。しかし、教員の質問の意図が学生に伝わらずに学生が黙ってしまい、教員も黙って待つということが頻繁にありました。質問の答えが学生からすぐに返ってこなかったら即座にフォローを入れる、といったちょっとしたことでも、学生の自信喪失を防ぎ、学習意欲を高める効果があります。また、定期試験の講評も試験が終わって1ヶ月以上経ってから、しかもA4で2枚くらいの特に参考にもならない紙が張り出されるだけでした。さらに、講義中の質問を講義後すぐに聞いても受け付けず、「質問は事務室を通して」と宣う教員もいました。学習においてフィードバックが遅い、もしくはなされないという事態は非常に学習者にとって弊害が大きいものです。
試行錯誤する機会を与えること、試行錯誤自体を素早くできること、フィードバックをすぐに返すことの3点を守れば、飛躍的に学習効果は高まるでしょう。

Point8 「フィードバックを上手に返す。」


遠山先生はある班の被告人質問のロールプレイの後、以下のようなコメントをしていました。

「〜について聞きます」というように、質問に見出しをつけていたのは良かったですね。見出しで聞かれることを予告されると、答えの準備ができるので答えやすいです。ただ、見出しがちょっといまいち。「逮捕時のことについて聞きます。」では、いつのことかが明確ではない。専門用語は使わないこと。たとえば、「警察署に着いた時のことを聞きます」というように、具体的なシーンを設定してあげると答えやすいです。


ポイントは5つあります。
1つ目は、よかった点を先に褒めていること。
2つ目は、悪かったところは「ここが良くない」だけでなく、「こうすれば良くなる」とも言っていること。
3つ目は、良かった点と悪かった点の両方について、なぜ良かったか、なぜ悪かったかの理由を述べていること。
4つ目は、アドバイスが具体的な行動につながるものであること。
5つ目は、教える側が自らアドバイスをやって見せること。

こうするとなぜ良いのか?

1つ目について。
まず良かったところを褒める→その後悪かったところを指摘するという順番は重要です。もし順番が逆にして悪かったところを先に指摘されると、「ああ、私はダメなんだ」と閉じこもってしまい、その後の良かったところの指摘が耳に入らない人は一定数います。
また、良かったところをまったく指摘しない指導者も結構いるように感じていますが、きちんと良かったところを指摘することは思いのほか重要です。指摘された側が自信を持てるという効果もありますが、それだけでなく「自分のこのやり方は正しいんだ」と確信し、できていないところに気を回すことができるようになるからです。

2つ目について。
ただ「ここがダメだ」「それは間違い」とだけしか言わない人がいます。しかし、悪かった点の指摘からは改善点は出てきません。「そこを考えさせるのが教育だ」という人がいそうですが、そのような発言は教育者の怠慢か、良い指針を示すことができない無能力に起因することが多いです。端的に「こうしたらもっと良くなる」と言えば、学習者はそれを学んでさらに次のステップに行くことができ、学習の高速化を図ることができます。

3つ目について。
なぜ良かったか、なぜ悪かったかの理由を述べることも重要です。良かったことの理由がわかれば、同じ理由が妥当する他の事柄でも同じやり方をしようと学習者が自分で改善しようと試みることができますし、悪かった理由がわかれば、自分で考えて修正することができます。すなわち、良いフィードバックをすれば、学習者が主体的に学ぶ手助けをできるのです。

4つ目について。
抽象的なアドバイスしかしない人は世の中たくさんいます。「もっと勉強しましょう」「がんばってください」「教科書を読んでみたら?」「やり方は人それぞれだからね」といったアドバイスをされた人はたくさんいるのではないでしょうか。具体的な行動につながらないアドバイスは無価値です。むしろ、アドバイスした(を受けた)気になっただけで実際には何も変わっていないのであれば、そのアドバイスは有害であるとすらいえます。

5つ目について。
教える側が自分のしたアドバイスの内容を自ら実践して見せると、アドバイスを求めた側は自分が具体的にどうすればよいかがわかるので、次回の試行錯誤時にすぐアドバイスを反映できるようになります。しかし、これを実際にやっている教員にはほぼお目にかかったことがありません。法科大学院で自分の出題した問題の参考答案を公開する、勉強の仕方を質問されて、自分がどうやって勉強したかを見せる、といったことをしている教員はどれだけいるでしょうか。

フィードバックの仕方は、教育者の教育能力と直結しています。同じ試験の講評にしても、そもそも講評をしない人は試験という学生が試行錯誤する機会を利用して教育しようという気がない人ということですし、講評が遅い人は試験直後という学びの絶好の機会を逃しても平気だということになるでしょう。フィードバックをしない、遅い、下手ということは教育能力がないか低いことと同義です。

「やってみせ 言って聞かせて させて見せ ほめてやらねば 人は動かじ」という山本五十六の言葉は、まさに上手にフィードバックを返す方法を体現したものだと思います。

Point9 「十分な下準備がされている。」


今回の集中講義は1日目から4日目までは90分×3コマ、5日目は90分×2コマでした。許可が出たのですべてのコマで録音していたのですが、その録音時間を見て気づいたことがあります。なんと、3コマの合計時間が270分を数分しかオーバーしていないのです。つまり、講義時間は272分とか273分だったということです。今回の集中講義は一方的に教員がしゃべるスタイルではなく学生が参加するロールプレイング形式ですから、かなり時間は読みにくいはずです。それでもきっちり時間内に収まっているのは、十分に講義の準備がされていたからでしょう。
また、内容自体もどのコマで何をどのように教えるかがかなり細かく構造的に決まっていることがうかがえました。

Point10 「学生への敬意を持つ。」


集中講義最後のコマ、後藤先生の締めくくりの言葉は

「みなさん、ありがとうございました。」


でした。
私としてはお忙しい先生なのにこんなに長い時間刑事弁護の基本を教えて下さったことがもったいないやらありがたいやらでしたので、後藤先生が受講生への感謝で講義を終えられたことには、とても感銘を受けました。
おそらく、時間をきっちり守るというのも、学生への敬意からくるものでしょう。「教えてやってるんだから少しくらい遅れてもいいだろう」という考えをする人であれば、平気で終了時刻を遅らせるからです。私自身、以前自分で3日間にわたるセミナーを開催したことがありますが、大幅に(数十分どころではなく数時間)予定時間をオーバーしたことがあるので、とても恥ずかしく思いました。
また、フィードバックを素早く丁寧に返すということも、学生を尊重しているからこそだろうと思います。逆に、フィードバックを返さないということは大変学生に対して失礼なことといえましょう。

自分の言葉を受け取ってくれる相手への配慮、すなわちどうやったら聞いてもらえるか、わかってもらえるかに心を砕く先生方の姿勢には、とても心打たれるものがありました。

Point11 「Point1からPoint10までが常に徹底されている。」


今回、私は主に神山先生・後藤先生・遠山先生に教えていただきました。そこでわかったのが、3人ともPoint1からPoint10の事項をいつどんなときも徹底的に実践しているということでした。お三方はそれぞれ東京・大阪・京都とバラバラの場所で弁護士をしています。それでも、教え方のスタイルは全員が終始一貫しているのです。ですから、2日目から3日目にかけて担当の先生が変わってもまったく違和感を覚えませんでしたし、ちょっとしたコメントひとつとっても、Point1からPoint10までの事柄が守られていました。おそらく共通するスタイルが無意識レベルにまで叩きこまれているのだと思います。

後藤先生が冒頭陳述の基本の型を紹介するときに、こんなことをおっしゃっていました。

「この冒頭陳述のやり方は、たくさんの刑事弁護人たちが何十年もかけて試行錯誤し、築きあげてきた形です。いろんな冒頭陳述をしてみて、失敗して、結局この形に収まったのです。みなさんもぜひ、先人の結晶を受け継いでみてください。」


先人が作り上げた技術の結晶を自分の血肉としているのが、超一流刑事弁護人の証なのだと感じました。

なぜ刑事弁護人は教えるのがうまいのか?


私見ですが、刑事弁護人の仕事のひとつは、刑事訴訟に関わる人たち(裁判官・裁判員・被告人等)に「自分の主張を伝えること」だと思います。どんなにがんばっても、自分の主張が相手に伝わらなければ説得することもできません。だから、彼らは「伝える技術」を徹底的に磨いています。何を、どんな順番で、どういう言葉で、どのタイミングで伝えれば伝わるのかにこだわりぬきます。
また、被告人は知的能力が低いことがあります。だから、刑事弁護人はどんな人でも適正な弁護を受けられるよう、とにかくわかりやすく、意を尽くして説明します。
2009年からは裁判員裁判が始まりました。今回の講義を担当した4人の先生方は、当初から裁判員裁判に関わっています。裁判員には「法律家の常識」は通用しません。


「なぜ前科がないことが量刑に影響を与えるのか。前科がないのはあたりまえじゃないのか」
「悪いことをしたのなら反省するのが当たり前。反省したからといって刑を軽くするのはおかしい」


これが普通の市民の考え方です。それでも刑事弁護人は被告人のために、前科がないということの意味、反省するということの意味を、刑事訴訟の理念に遡ってわかりやすく説明する必要があります。

「伝える」ということは、「言葉の受け手がその言葉の意味を理解すること」です。そして、教育の内実のひとつはまさに「伝えること」であり、コミュニケーションそのものです。彼らはまた、コミュニケーションの達人であると言ってもよいでしょう。

このような仕事の中で「伝える技術」を鍛え上げたからこそ、4人の先生方の教え方はまさに職人芸と呼ぶべき域に達しているのではないでしょうか。

最後に〜教育における構造上の問題点〜

あらゆる「教育する」という場面では、構造的に教える側が上、教えられる側が下、という上下関係が構築されます。私は、この上下関係が教育にまつわる様々な問題を引き起こしていると考えています。その根本的な問題点が、「教える側が自らの教育能力についてのフィードバックを得にくい」ということです。教える側は上の立場ですから、下の立場である学習者が「あなたの教え方は下手だ」とはなかなか言えません。また、もし学習者からフィードバックがあったとしても、教える側には「自分は立場が上だ」という意識がありますから、なかなか素直に批判を受け入れ難いという問題もあります。教育者を批判すること自体が難しい(その批判が正しいかの判断が容易でない)ということもあるでしょう。「優れた実績があるからといってよい教育者であるとは限らない」という問題は、法科大学院法科大学院生が嫌というほど痛感したはずです。

しかし、「教育する」という行為は、人が生きていれば必ずどこかでしなければならないことです。会社内で部下に教えることもあるでしょうし、自分の子どもに教えることもあるでしょう。以上のような教育の問題点を踏まえた上で自分の教育能力を向上させようと努めることは、必ず生きていく上で役に立つことと思います。


他に「教え方が上手な人にはこんな特徴がある」ということがあれば、ぜひコメント欄やはてなブックマークコメントで教えて下さい。


最後に、今回の集中講義のノートを再掲しておきます。

刑事弁護実務・集中講義ノートをダウンロードする
(PDFファイル・347KB・目次+39頁)

公開を終了しました。


本エントリーは以上です。長文をお読みいただき、ありがとうございました。

*1:P=Point R=Reason E=Example P=Point

時代遅れの組織構造と労働契約、そして2015年からの働き方。

日本の小中高等学校の教育というのは、基本的に自分の頭で考えずに言われたことをひたすらこなせる人が評価されるように設計されていると思う。戦後の教育改革がなされた時代において、国のために必要な人材はまさにそういう人たちだった。


3.11以後被災地にボランティアに行ってみた人はわかると思うけれど、復興するときというのはとにかく膨大な単純労働が発生する。ひたすら物資を集め、運び、整理し、配り、土砂をかき分け、運び、捨てるだけの仕事が大量にある。戦後も似たような状況だったろう。そういう現場では自分の頭で考える人はほとんど必要ない。必要なのは、指示に従って正確に素早く作業をこなせる人だ。


高度経済成長期を支えたのも、自分の頭で考えずにひたすら言われたことを確実にこなす教育を受けた人たちだった。工場でひたすら人が機械を作る製造業が日本を支えた。しかし工場が機械化され、日本の産業のうち知識労働の割合が増えてくると、だんだん自分の頭で考えない人が困る時代になっていく。この話自体は別に目新しいものじゃない。四半世紀前に外山滋比古先生が『思考の整理学』においてグライダー人間と飛行機人間という比喩で看破していたことだ。

自分の頭で考える人と、考えない人のギャップを埋める必要はない


しかし、今の時代においてもそのギャップを埋める必要はない。言われたことをひたすら確実にこなす人材は依然として膨大に必要だからだ。それはこれからも変わらない。ただ、そういう人たちの待遇は確実に悪くなっていく時代になっている。


それはなぜか?


誰でもできる仕事は機械に取って代わられるか、より安い労働力を提供する人が持っていくから、というのは誰でも思いつく答えだと思う。
しかしそれだけではない。労働契約という契約形態と、既存の組織構造自体が非常に非効率なものになってしまったからだ。

労働契約というスタイルはなぜ時代遅れになったか?


労働契約とは、使用者の指揮命令に従い、労働力を提供する代わりに賃金を得るという契約類型だ。自動的に仕事をしてくれる機械がない、または機械を動かすために人手が必要な分野では労働契約の効率は良かったし、今でもまだ一部の産業では通用する。国にとっても税金は取りやすいし、使用者に様々な義務を課すことで国民の多くの保護を図ることができる便利な代物だ。しかし知識労働の割合が増えたという時代の変化と国による労働契約に伴う負担の増加によって、効率の悪いシステムとなってしまった。


会社にとって労働契約を締結するという行為は、博打の要素を排除できない。採用するとき、会社は採用する人が期待通りの仕事をしてくれるかわからないし、応募者も自分のやりたい仕事ができる職場かはわからない。双方何もわからない状態でいきなり強固な契約関係に入る。「たまたま」採用した人が期待通りか、それ以上の仕事をしてくれ、応募者としても楽しく働けたら勝ち、という博打だ。もともと分が悪い賭けなのに、これだけ変化が激しい今の時代にうまくいくわけがない。今までしていた仕事がいきなりなくなったり、激変することはよくある。そうなってもまだ会社も労働者もハッピーのままでいられる可能性は非常に低い。

既存の組織の非効率性


日本のほとんどの会社はピラミッド型であり、特定の事業を永続的に遂行するために組織されている。フラット型の組織も増えつつあるが、数は圧倒的に少ない。どちらの組織も、今の時代においては3つの点で効率が悪い。


1つは、上下関係が長期間固定化されることによる非効率性。

組織の上部層は取引先や顧客以外から評価されないから、自発的に勉強したり自省したりしない限り、加齢に伴って能力的に衰えていく。しかし上場企業でなければトップが首を切られることもないし、トップの給料が減らされることもない。無能なトップが事業の邪魔になっているのではないか?


2つ目は、事業に必要な能力しか評価されないという非効率性。

会社における人材は、会社の事業の遂行において役に立つ能力だけが評価される。裏をかえせば、会社の事業の遂行に関係のない能力は、どんな素晴らしい能力であっても評価されないということだ。それは非常にもったいないことではないか?


3つ目は、会社の枠が固定化されることによる非効率性。

会社というものをイメージするとき、ほとんどの会社員はどこまでが会社か、具体的には、会社がやってる事業はどこまでで、会社に所属している人は誰か、ということが明確に区別できる存在であることを前提としている。しかしそのような固定化された枠が、激しく変化する時代の流れに追いつくことを阻害しているのではないか?

時代遅れの組織構造と労働契約が崩壊する過渡期に発生したノマドやコワーキング


最近流行りのノマドやコワーキングという言葉は、労働契約の博打性・既存の会社の組織構造の非効率性が徐々に省みられ始めた結果生じたものだろう。おそらく2015年頃には労働契約の非効率性がもっと社会的に表面化し、組織と労働というそれぞれの概念の転換期がやってくると思う。


世の中に仕事は大量にある。しかしそれをこなすためには労働契約である必要はない。契約ではなく仕事をベースにした労働形態と組織形態を模索すべきだ。


今はまだ仕事ベースで安定的に収入を得る仕組みがない。自由を求めて個人事業主になったとしても、安定がなければ労働者よりも自由がなくなる。また、個人の力というのはたかが知れている。だからノマドやコワーキングというスタイルは今のまま維持することはできず、これからまた変化・発展していくだろうと思う。コワーキングスペースからビジネスが立ち上がっても、作った会社が既存の組織を踏襲したものであれば、また同じ非効率を繰り返すだけである。

ベーシックインカムと仕事ベースのシステム


ベーシックインカムという考え方は最低限の安定を保障し、結果として人間の自由を保障するという点で面白いとは思う。しかし大きな欠点はそれだけで生きていけるとほとんどの人間は堕落し、社会との関わりを絶ってしまうだろうということ。それは人間の可能性をむざむざ放棄することで、とてももったいない。


仕事ベースのシステムでは、誰でもできる仕事ほど単価が安く、特定のスキルや知識や能力を持った人しかできない仕事ほど単価が高い。また指揮命令関係はないから、誰もやりたがらない仕事ほど単価は上がる。需要と供給の一致する点が単価になるというシンプルな原理。ただ実現のハードルはかなり高い。仕事の単価をどうやって決めるか。成果をどのように定義するか。仕事はどうやって創りだすのか。誰が仕事を管理するのか。そもそも何を仕事と定義するのか。簡単なタスクも仕事になるのか。クリアーしなければならない課題はたくさんある。

枠から自由になった組織


組織というのは、何らかの目的を達成するために存在する。しかし組織の存続自体が目的化することが往々にしてある。

本来、民法上の法人というのは事業目的を達成すれば解散するものとされていた。

民法第68条(法人の解散事由)
1 法人は、次に掲げる事由によって解散する。
(1)定款又は寄附行為で定めた解散事由の発生
(2)法人の目的である事業の成功又はその成功の不能
(3)破産手続開始の決定
(4)設立の許可の取消し


この規定はすでに削除されているが、組合の解散事由を定める民法682条でも、「組合は、その目的である事業の成功又はその成功の不能によって解散する」としている。どちらも今から100年以上前に定められた規定だ。

このような法人の本来的意義からすると、組織の枠を維持するために組織を存続させるということはそもそもおかしいということになる。そして、組織において枠があることは必要条件ではない。何らかの目的を達成するために必要であれば組織化し、目的に変化があれば枠の形を変え、ときには分裂し、目的を達成すれば解散するという目的志向の組織を考えるべき時が来ていると思う。

自分がやってみたいこと


いろんな専門分野を持った人たちが緩やかにつながり、プロジェクトを創りだす。それに付随して発生した仕事がRPGみたいにクエスト形式で仕事一覧になって、自分のやりたい仕事を早いもん勝ちでとって、達成したら報酬もらえるという仕事ベースのシステムを作ってみたい。

ベーシックインカムだけでは生きていけない程度の額を支給しつつ、労働契約に入らずに自分のやりたい仕事をやればそこそこの収入が手に入り、いろんな人が社会との関わりを保ちその人の持つ多面的な潜在能力を最大限発揮して生きていけるような組織インフラを作ってみたい。


2015年ころまでの目標です。



今年は2012年。明けましておめでとうございます。

(このエントリーは、@rashita2さんとのtwitterでのやり取りをベースに書いたものです。)

本エントリーは以上です。
他に「これからはこんな働き方や組織がくる!」ということがあれば、コメント欄やはてなブックマークコメントでぜひ教えて下さい。twitterでもfollow&replyお待ちしております。

ファイナンシャルリテラシーを身につける方法


ぼくは去年からFP(ファイナンシャルプランナー)としても活動しているわけですが、仕事上いろんな人と会ってきて、「ファイナンシャルリテラシーを持っている人はほんとうに少ない」ということを実感しています。このエントリーではファイナンシャルリテラシーとは何か、そしてファイナンシャルリテラシーを身につけるにはどうしたらいいかについて書いてみようと思います。

ファイナンシャルリテラシーとは何か?


ファイナンシャルリテラシー(Financial Literacy)とは、直訳すると「お金に関して読み書きできる能力」です。より具体的に言うと、「お金に関して理解し、適切な決定と行動ができるようになるためのスキルと知識」でしょうか。

残念ながら、日本では普通に生活していてファイナンシャルリテラシーを身につけることはできません。なぜなら、お金の教育は義務教育の内容にも入っていないし、そもそも親や教師にファイナンシャルリテラシーがないからです。

40代以上の人たちにファイナンシャルリテラシーがない理由


日本は1990年頃まで、定期預金の金利が8%という国でした。80年代には郵貯の10年定期の利息が年利12%ということもありました。つい20年から30年ほど前の話です。*1
しかしバブル崩壊後のゼロ金利政策により、現在は0.1〜0.2%です。
現在40代以上の人が社会人になって給料をもらい始めたときは非常に金利が高い時代でしたから、「とりあえず銀行か郵便局に預けておくか」で十分でした。金利が10%であれば7年放置しておくだけで倍になる、そんな時代でした。
ですから、40代・50代・60代という、10代から30代までの子どもを持つ世代の人たちは、「銀行か郵便局にお金を預ける」という選択肢しか知りません。当然、子どもたちもそれ以外の選択肢を知らないことがほとんどです。日本では、お金の無知の連鎖がいまもなお、続いています。


さて、話を戻してファイナンシャルリテラシーとは何か、という点についてもう少し掘り下げてみようと思います。「お金の知識」というとすぐにFXやCFD、株式、投資信託といった個別の商品の知識に飛びついてしまいがちです。しかし、それらはあくまで各論。やはりまずは総論たる「お金の流れ」、特にストックとフローの関係について押さえるべきでしょう。

ファイナンシャルリテラシー総論〜ストックとフロー〜


まずはこの図を見てください。



別に損益計算書貸借対照表という言葉は知らなくても大丈夫です。ちなみに、説明のために簡素化しているので正確な図でもありません。
損益計算書は、お金の出入り(フロー)を表します。例えばお給料をもらったら収入、クレジットカードの代金を支払ったら支出に記載されます。
一方貸借対照表は、ある時点で持っているもの(ストック)を表します。例えば銀行の預金残高は資産、住宅ローンは負債に入ります。

損益計算書貸借対照表がどのような関係になっているかというと、資産が収入を生み、負債が支出を生むという関係です。

総論としてのファイナンシャルリテラシーは、以上の2点、すなわち損益計算書貸借対照表の意味および両者の関係が分かっていれば十分です。

この2点についてわかっていれば、銀行預金というほとんど収入につながらない資産しか持っていないことのもったいなさ資産と思っていた持ち家が実は支出を発生させるだけの負債にすぎないということがわかるでしょう。

ぼくはセミナーなどではさらにお金持ちと貧乏人の損益計算書貸借対照表の違いといったものを紹介するのですが、ここでは割愛します。

ファイナンシャルリテラシーを身につけるためには?


資産から収入を生み出す好循環を作り出せることができれば、ファイナンシャルリテラシーが身についたと言えます。そのためには、まず損益計算書貸借対照表の意味と両者の関係を理解すること、そして実際に収入を生み出す資産を手に入れるために投資することです。
「投資は胡散臭い」と思ってる人は結構多いように思います。でもそれは自分が知識を持たずに一方的に販売サイドから勧誘されるから胡散臭いと思ってるだけで、自分が知識を持って「この投資をやる」と決めてやれば、胡散臭いと思うことはないのではないでしょうか?
投資を胡散臭く思うのなら、まずは自分に投資すべきです。本を読んだり、セミナーに参加したり、人に話を聞いたり、ネットで調べたり。できることはたくさんあります。

参考書としては、やはり『金持ち父さん貧乏父さん』でしょうか。日本で出版されて10年が経ちますが、いまだにこれ以上わかりやすくファイナンシャルリテラシーについて書かれた本はないように思います。

おまけ:セルフファイナンシャルプランニングのための5ステップ

1.現状の家計を把握する(銀行口座・預金残高・自分名義の資産の把握・毎月の収支を把握)
2.ゴールを設定する(ex.60歳時点で1億円持っておく・毎年100万のキャシュフローを得る等)
3.具体的な商品について学ぶ
4.ゴールへのプランを立てて投資する
5.必要に応じて見直す


預金しているだけで何とかなっていた時代が終わった今、ファイナンシャルリテラシーを持って実際に投資することは、もはや一般教養であると考えるべきでしょう。
お金は、あくまで夢を実現するための手段にすぎません。お金が目的になることはあり得ません。あなたの夢のためにも、ファイナンシャルリテラシーを身につけることは必須であるとおもいます。

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あなたは、ターニングポイントの向こうの世界を見ていますか?


こんな記事を見つけました。

恐ろしいのは円高でもデフレでもない | エコノMIX異論正論 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト: http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2010/10/post-235.php


はてなでおなじみ池田信夫氏のコラムです。ぜひ一読いただければと思いますが、要約すると「今の円高は円に価値があるから買われているわけではなく一時的に逃避先となってバブルになっているだけ。国債が買われなくなって利率が上がり、それに引きずられて悪性インフレが発生すれば一斉に国債価格・株・円が暴落する」といったものです。

文中に外資系銀行のファンドマネージャーが「われわれは今みたいな金利で絶対にJGB(日本国債)を買いませんよ」と言っているところがありますが、日本国債の買い手は94%が日本の金融機関と個人であり、別に外資の方々に買ってもらわなくても今のところは何とかなって(しまって)います。しかし、日本の金融機関も国債を買わなくなったらどうなるか?
大雑把に言うと、国債が買われなくなれば、買ってもらえるように国債の利率が上がります。するとそれに連動して銀行の貸付金利も上がります。当然変動金利の住宅ローンの毎月の支払いは増えますし、企業も借り入れが苦しくなります。
このような状況下で、何かのきっかけで(たとえば戦争が起こって輸入品のコストが急騰)日本国内でインフレが発生すればどうなるか?

以上のようなストーリーは、ありえないものだと思いますか?


ところで、昨日ドル円は一時80円台を付け、15年ぶりの円高となりました。マスコミも猫も杓子も円高円高と言っています。
しかし気になるのは、「誰も円安に転換するときのことを言わない」ということです。

これは、1995年に79円台をつけたときのチャートです。





史上最安値をつけたあと、わずか5ヶ月で79円75銭から104円80銭と25円の円安ドル高。その後3年で147円71銭まで行きました。
少なくとも日本は過去に一度、円高から円安への急激な転換というものを経験しているわけです。

最近は誰も彼もが円高だ、日銀は無能だ、早く円高対策をしろ、と言っているわけですが、はたして円高から円安に転換したときのことを考えている人はどれくらいいるでしょうか?
1929年の世界恐慌の直前、ウォール街の靴磨きの少年が投資を薦めた事から不況に入る日は近いと予測し、暴落前に株式投資から手を引いた投資家がいたという有名なエピソードがあります。今はまさにこのような状態ではないのでしょうか?


国債価格ははたして本当に暴落するのか、いつ円高から円安に転換するのかといった先のことを予測することは不可能です。しかし過去と現在の材料から、どのようなことが起こりうるかを予測することは可能です。その予測に基づき、「どんなことがあっても対応できる状態を自ら作れること」が現在求められていることなのではないでしょうか。

円高の話で言えば、たとえば余裕資金だけでも今のうちに外貨に換えて海外に置いておき、国債の暴落と円安に転換したときに備えておく。余裕資金ですから基本的に何かがあったときしか必要ないので、仮にさらに円高が進んだとしても日本円に換えずにそのまま放置しておけばいい。すなわち、「円高になっても円安になっても困らない体制にしておく」ということです。


「リスク分散が重要」と言っている人は結構いますが、実際にそれを実行している人はあんまりいません。するとしてもパソコンのデータのバックアップくらいではないでしょうか。

データのみならず、生きていくため自分に関するいろんなことを自ら冗長化できる能力が必要となりつつある時代になっていると思います。

GIGAZINEが書くべきだった求人募集のエントリー


【求人募集】GIGAZINEのために働いてくれる記者・編集を募集しますを読みました。
GIGAZINE編集長の言うこと、つまりプライベートの時間を仕事のことを考えたり勉強したりする時間に使うというのは、いい仕事をして自分の能力を磨こうと考える人にとっては当然のことです。しかし、それを経営者が要求してはダメ。そのようなことができる人を採用し、そのような時間の使い方をしたくなるような環境を提供するのは経営者の仕事です。さらに、あのエントリーの書き方では今いるスタッフのモチベーションも大きく下げてしまうでしょう。
ただ、山崎編集長の文章から察するに、精神的に追い込まれていてただ現状を吐き出すしかなく、どんな文章であれば自分の望む人材が応募してきてくれるか、という点に配慮する余裕がないのではないかと思いました。

そこで、ただ批判するだけではなく、私の採用担当としての経験をもとに「GIGAZINEはどう書けばよかったか」という求人募集のエントリー例を書いてみようと思います。



【求人募集】GIGAZINEのために働いてくれる記者・編集を募集します

2007年の秋以降、ことあるごとに人材を募集してきましたが、今回はさらにもう一段階上のレベルアップを目指し、これまでとはまったく違う視点と条件で人材を募集することにしました。


求人の詳細は以下から。


GIGAZINEとは何か?


編集長の山崎です。GIGAZINEは2010年4月1日に個人運営のニュースサイトとしてスタートしました。今年で10年目になります。「GIGAZINE」とは、「オンラインマガジンとしてギガバイト級のサイトという意味」で、ギガバイト級の「GIGA」と雑誌の「MAGAZINE」を組み合わせたものです。
実は、私自身は記事を書くのがあまり好きじゃありません。私の記事があまり長くないのはそのせいだったりします(笑)。しかし、「最新の情報をたくさんの人に知ってもらいたい!みんなのネットライフを少しでも楽しくしたい!」という思いから、とにかく毎日更新することを心がけてきました。「いつの間にか10年が経っていた」という印象です。*1
現在GIGAZINEの月間ページビューは2010年4月時点でRSSなど含めて約6155万、livedoorニュース(2009年9月時点では月間約1億3000万ページビュー)、Googleニュースにニュース配信中。*2


GIGAZINEが一緒に働きたい人たちの5つの人物像


いつの間にかたくさんの人たちに見てもらえるようになりましたが、まだ「GIGA」=月間10億ページビューには至っていません。そこでさらなる高みを目指すために、こんな人たちと一緒に働きたい、と思っています。

1.新しいものが好きで、常に目新しいものを探し続けている
2.新しいものを見つけたらとりあえず試さずにはいられない
3.自分の書いたものを人に読んでもらえるのが嬉しい
4.人とコラボレーションして仕事したい
5.いろんな分野の記事を書くことを通して、24時間ずっと自分を成長させたい


GIGAZINEで働く5つのメリット


GIGAZINEで働くと、こんなよいことがありますよ。

1.最新のガジェットや電気製品にさわることができる
2.最新のジャンクフードを経費で食べられる
3.自分の書いた記事が何千万という人に見てもらえる
4.今注目されている企業やイベントを見に行くことができる
5.ひとりでは決してできないことを、いろんなプロフェッショナルと一緒に実現できる


私と一緒に「GIGAZINE」を創りあげたい方、お待ちしています。


◆募集要項


以下略。ただし応相談ではなく条件ははっきり書くべき。


以上の求人募集の記事は1時間で書き上げました。求人募集記事に必要なネタはすべてネットから拾ってきたのですが、あまり情報がなかったので内容としては40点くらいでしょうか。実際に編集長や今のスタッフの方に取材をしたりさせてもらえればもうちょっと充実した内容になります。いや、やりませんがw
あれ、GIGAZINEさんって大阪なんですね。東京だと思ってました。8月は私はそれほど忙しくないので、採用のコンサルとかGIGAZINEさんいかがです?(笑)

求人募集の記事のポイント


私は、求人募集の記事は以下の3つのポイントを押さえるべきだと思っています。

1.その会社の理念がはっきり伝え、理念に共感してもらえるような書き方をすること
2.会社側から応募する人にどんなメリットを与えられるかを書くこと
3.応募する人が「この会社で働くのは私だ!」とイメージできるように具体的な人物像を書くこと


上述のエントリーは以上のポイントを意識して書いています。ただ、すべてのポイントについて情報が足りないので、想像で補っています。

このエントリーを書いてる途中に思ったのですが、GIGAZINEって究極的に何がしたいのかよくわからないのですね。別にそれは言語化できる必要はないんですが、イメージもよくわかりませんでした。だからありきたりな内容しか書けなかったですね。

編集長の山崎さんは、いまこそ「GIGAZINEとは何か?」という問いについて真剣に考え、従業員さんと対話するべきときなのではないかと思います。

GIGAZINEはいまや世界でも注目されるニュースサイトとなっています。私ももう長い間お世話になっているので、この逆境(という名のさらなる飛躍を遂げるためのチャンス)に負けずにこれからも頑張って欲しいですね。

いい仕事をするための7つの心構え

1.やる必要のないことはやらないこと。

とにかく品質だけを追求するだけではアマチュアと同じ。
限られた時間の中で多数の顧客(組織の周りの人も含む)の要望に応える品質の仕事をするために、やる必要のないことはしないことが重要。
速く仕事をする秘訣は、速く手を動かすのではなく、する必要のないことをしないことだから。

する必要のないことをしないためには、仕事をする前に仕事が完成した状態とそこまでの道のりをイメージすること。

2.会議では意味のある発言をして会議の参加者に変化や気づきを与えられるようになること。

ただ会議に参加して参加者の意見に追従する発言をするだけでは、会議や打ち合わせに参加する意味がない。その人がしゃべっている時間は無駄な時間なのでむしろ参加すること自体有害といえる。
ただ黙っているのもダメ。黙っている人は存在する意味がないのでむしろいない方がいい。

必ず会議の前にその内容を把握しておき、提案・全然別の観点からの意見・改善案などを用意しておくこと。

3.残業せずに帰れるようになること。

残業は会社にとって害悪でしかない。「会社のために残業しているのに」などというのは勘違いも甚だしい。無駄な残業は自分の生産性を下げ、周りにも「残業してもいい」という悪影響を与え、さらに会社の資源も無駄遣いすることになる。
全ての仕事はタイムリミットを決め、定時の範囲内に全て終わらせるようにならないと、いつまでも仕事の生産性は上がらない。

もし常態的に残業をしているのなら、最低でも19時までにすべて終わらせられるようにならないといけない。

4.常に自分・周りの人・会社・取引先の改善点がないか考えること。

「人間は年を取ればその分成長する」と周りから考えられていることが多い。したがって、年を経るごとに成長していなければ、それは「後退している」とみなされる。
他の人や本から勉強をしない人間は、いつまでたってもやることも言うことも内容が変わらない。そのような人間は周りから「成長していない」とみなされる。
また、取引先といい仕事をするためには、常にその取引先の改善点をも考えて提案し続けることをしないと、他の業者との差別化を図れない。品質というのは目に見えない基準なので、必ずコスト削減の波に飲み込まれる。

相手から「この人以外とは仕事したくない」と思われることが必要。

5.仕事は人と共同してやること。1人でやろうとしないこと。

仕事を1人でやるのなら、組織で働く意味はない。個人事業であっても、完全に1人だけで仕事をすることはほとんどない。
仕事は結果的にうまくいけばそれでいい。1人で最初から最後までやる必要は全くない。1人が仕事を抱え込むと、トラブルが発生すれば周りが気づくまで悪化することになるし、「あいつは何をやっているのかわからない」と思われるようになる。

周りの人をよく見てどんな能力を持っているかを把握し、誰とどんなことをすればいいかをいつも考えること。

6.何かしたいのなら、先に「こいつには任せられる」という信頼を築くこと。

「仕事を任せてもらえない」と言う前に、「自分には仕事を任せられるほどの信頼があるか?」と自問すること。ほとんどの人は、任せてもできるかどうかわからない人に仕事を任せるということはしない。

まずは与えられた目の前の仕事を確実にこなして、仕事への信頼残高を増やすこと。

7.本や人から情報を収集して創造できる人間になること。

創造とは、無から有を作ることではない。すでにあるものとあるもの同士の間に新たな関係
を見出すこと。

常に本や人から学んで自分の中に新しい知識=創造の材料を取り込み、創造を自らに促せるようになること。



自戒を込めて。

非iPhoneユーザーによるiPad初日の感想。

今日の夕方、予約していたiPadが届きました。練習がてらiPadで率直な感想を書いてみます。

正直なところ、ちょっと期待外れ。いや、正確には自分が想像していたほどの感動は得られなかったといったところでしょうか。いい意味でも悪い意味でもスマートフォンとパソコンの間にあるツールという印象です。

パソコンの画面をさわって動かせるのはなかなか楽しいです。もう触りすぎて指がいたいくらい。動作はかなり軽く、Googleマップなんかもパソコンより快適に動きます。WiーFi版でも位置情報取得できるのにはちょっとびっくり。


しかし重い。そしてちょっとでかすぎる。仰向けに寝転んで顔の上に落とそうもんならかなり痛い目にあいます。アメリカ人向けのサイズですね。日本人にはかなりしんどい大きさと重さのような気がします。

あと、箱から出してからが非アップルユーザーに不親切すぎです。何しろiTunesをパソコンにインストールしてユーザー登録しないと起動させることすら出来ないのです。つまりパソコンを持ってない人はiPadは使えないわけですね。結局iTunesのインストールしたりしてたら起動するまでに1時間以上かかりました。
ちなみに私はiTunesストアに登録してアカウント確認用のメールを送信し、メールボックスから確認用のアドレスをクリックしても認証されないというトラブルに頭を悩まされました。結局FirefoxではなくIEにアドレスを貼り付けてみたらうまくいきました。もし同じトラブルに遭遇した方にはご参考までに。


また、アプリを入れないとたいしたことは何もできないので、そこも初心者にはハードルが高いな、と思いました。「こんなことができるアプリがある」ということを知らないと、なかなかいいアプリをみつけることはできないからですね。

入力についてですが、これはちょっと慣れが必要です。日本語を入力した時に打ち間違いをしたときは、パソコンならマウスで間違えたところをクリックするか、カーソルキーでカーソルを移動するわけですが、iPadはカーソルキーがないので指でおさえないといけません。これがなかなか一発で決まらずに、何回か試行錯誤しないといけません。長押しするとズームになってちょっとカーソル移動しやすくなりますけど。あと、文章を上下に移動するのも大変です。キーボードにカーソルキーはほしいですね。


母親に使ってもらおうと思いましたが、どういいう反応するかなーたぶんあまりいい反応はしないんじゃないかなーと思いました。ただ、最初のハードルさえクリアーして、iPhoneOSの独特の操作方法に慣れることができれば、高齢者の方にとってはパソコンより遙かに取っつきやすいツールだと思います。

iPad初日の感想はこんな感じです。使いこなしていくにつれてまた印象が変わっていくと思うので、随時書いていこうと思います。


キーボードドックは欲しいなあ。慣れてないせいもあるけど画面の上でタイプするのはかなりミスが多いですね。キーボードはカーソルキーが付いてるので、これがあるだけでもかなり楽だと思います。


twitterクライアントは今のところTwitRockerLiteという無料のツールを使ってます。TweetDeckはバグが多くて、使い物にならないですね。