「正論」の取扱説明書〜正論スピーカーへの4つの処方箋〜

「正論」とは

正論・・・道理にかなった正しい議論・主張。
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn/107012/m0u/%E6%AD%A3%E8%AB%96/


正論は、文字通り「正しい」「論」です。実際のコミュニケーションの中ではたまに、ネット上では頻繁に見られますよね。多くの場合、正論は「理想」と置き換えることができます。そして、「現在は××だが、本来は/常識的には/普通は/○○である「べき」だ」という形を取ることが多いです。


しかしご存じのように、この「正論」は、取り扱い方を間違えると人間関係にひびを入れてしまうことがあります。

正論の問題点


正論は、言ってる方の人間は気持ちいいものです。だって正しいですから。少なくとも間違ってはいないので、相手は反論できません。しかも正論を言う人は「自分は忠告してあげている」と思ってたりもします。


一方、正論を言われた方の人間はたいてい腹が立ちます。正論は価値観の押しつけにほかなりません。正論を言っている方は「自分は正しいことを言っている」と思っていても、ほかの人にとっては「正しくない」ということがあります。
また、「できてないことぐらい言われなくとも分かっているが、現実にはそうもいかない」、ということも多々あります。この場合に、特に当事者でもない人間に言われると



と言いたくなりますね。


正論を言う方は「せっかく忠告してあげてるのに相手が聞く耳を持たない」、正論を言われる方は「現実を知らずに理想論ばかり言いやがって」で両者の関係は悪化するばかり。

ではどうすればいいでしょう?

正論で人間関係を壊さない方法

1.正論を言わない


正論が相手を傷つけるのならば、言わなければいい。一番シンプルな方法です。この方法でうまくいくことも結構あります。

ただ、本当にある問題を解決しないといけない時に黙っていては、何も変わりません。そんなときは以下の方法がお勧めです。

2.正論の言い方に気をつける


同じ内容でも、言い方に気をつければ相手の受け止め方ががらっと変わります。よく使われるテクニックが以下の2つ。


(1)疑問形で言う

「○○だから●●すべきだ!」ではなく「○○だから●●だと思いませんか?」と言えば、少なくとも表面的な印象は少しやわらかくなります。

(2)相手の現状を認めてから正論を言う

これは、「あなたは本当に頑張ってると思うし、実際よくやってくれてると思う。でも、こうした方がよくありませんか?」というように「自分は相手のことをちゃんと評価し、認めている」というメッセージを発しながら正論を述べるというテクニックです。このやり方をすれば忠告であるという形を取りやすいので、相手が聞き入れやすくなります。


ただ、以上の2つはしょせんテクニック。実際の問題解決には役立たないことが多いです。ではどうすればいいか?

3.相手が正論を聞く耳を持てるような関係・状況を作る


つまり正論を言う前に、相手が正論を受け入れられるように準備をしておく、ということです。これはどのような問題を解決する必要があるか・その問題にかかわっているのは誰か、などにより具体的にどういう準備をしないといけないのかは変わるのですが、会社の中で直接の上司に何か言いたいときは、さらにその上の上司に先を話を通しておいてから直接の上司に話をする、といったことが考えられます。また、長期的には正論を言っても相手がそれを忠告として真摯に受け止めてくれるような関係を築き上げておくことが重要です。

コミュニケーションとは、相手に言葉が届いてはじめて成立するもの。正論も例外ではありません。「どうすればこの正論は相手の心に届くか?」ということを考えることが大切かと思います。

4.正論を自分が実践する


正論を言いたくなるのは、「本来こうあるべき」という状態が実現されていないと(自分が)思っているからですよね?じゃあ「本来こうあるべき」を実現するために、自分が行動したらいい。
「自分はこうすべきだと思う。だから協力してくれませんか?」と言って周りを巻きこめば、よりやりやすくなります。


自分がこの正論で実現したい状況は何なのか?
相手に言うことでそれは実現できるのか?
自分は何をしたらその状況を実現できるのか?


こういった自問自答の後に行動に移せば、人間関係を壊すどころか周囲からの信頼を得ることができるでしょう。だから、逆に「正論を言いたい!」と思った時はチャンスだと思うんですよね。だって正論を言いたいということは何か不満な状況があってそれを自分が実現できればみんなからも感謝されるんですから。



正論で人間関係が壊れるときは、99%、正論を言う人の方が悪いものです。聞く耳を持たない聞き手の方が悪いことはほとんどありません。

他人を矯正しようとするよりも、自分を直す方がよほど得であり、危険も少ない。
『人を動かす』D・カーネギー

すべての正論スピーカーに捧げます。

自戒を込めて。


<本書の参考エントリー>

No.30 『人を動かす』 デール・カーネギー



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