「できる人」の3つの条件

「できる人」とはどういう人か、ということは、僕のテーマのひとつです。

梅田望夫さんのblogのとある一節に引っかかるものがあったので、現在僕が考えていることを書いてみようかと思います。


My Life Between Silicon Valley and Japan:「世界観、ビジョン、仕事、挑戦――個として強く生きるには」講演録(JTPAシリコンバレー・ツアー2008年3月6日)より引用。

戦略性というのは、いろいろな定義がありますが、個人が生きていく上での戦略性というのは、「自分の時間の使い方に対してどれだけセンシティブか」「いま自分がここで使っている時間というのが正しいのかどうか」を問い続ける姿勢をもっていることだと思っています。

僕は、コンサルティング会社に10年くらい勤めていたのですが、最初の3年くらいは一番下っぱで働きます。だから、明らかに最後の報告では必要ないはずの作業を命令されるということがありました。プロジェクトリーダーが「おまえ、これ調べておいてくれ」と。何も考えずに「わかりました」と言ってやると、それは負けなわけです。自分がそのプロジェクト全体のなかで、今やれと言われていることは最後に役に立つことなのか、という判断能力が必要なのです。

3つの条件

僕が考える「できる人」の条件は、以下の通りです。

  1. 『当たり前』を疑うことができる。
  2. 『当たり前のこと』を『当たり前のこととして』できる。
  3. 『当たり前』のレベルを常に上げ続けることができる。

3つの条件その1:『当たり前』を疑うことができる。


最初に断っておきますと、僕は従業員として企業に勤めたことはありません。しかし現在はとある企業の取締役を務めています。

聞くところによると、会社に勤めると上司からなんでやらないといけないのかよくわからない仕事を押しつけられたり、もっとうまいやり方があるのに非合理的としか思えない仕事のやり方を甘受しないといけないといったことがあるようです。

それはなぜか。

・上司の命令に従うのが『当たり前』だから。
・会社というのはそういうものだから。
・会社の仕事というのは共同でやるものなので、ひとりが逆らうことは当然ダメだから。

ぱっと思いつく限りではこんなところでしょうか。


本当ですか?本当にその仕事をすることは『当たり前』ですか?


もちろん、上司の命令には何でもかんでもすべて逆らえ、といっているわけではありません。ただ単に自分がやりたくないといった理由で仕事を拒否してもいい、といっているわけでもありません。


自分に仕事が与えられたら無批判にそれをこなすのではなく、

・その仕事をする目的は何か
・その仕事の目的を達成するための手段として他に合理的な方法はないか
・なぜその仕事を自分がやらないといけないのか

これらを常に考えなければならない、ということです。

「仕事の目的」を疑うことが重要


以上に挙げた中で特に重要なのは、1つめの「その仕事の目的」です。
上司が仕事を任せる場合、普通は「○○してくれ」としかいいません。「××するために必要だから、○○してくれ」という人は少ないと思います。もしいるとすれば、その人は素晴らしい上司です。
「○○してくれ」と言う上司の場合、頭の中でその仕事の目的というのは考えていて、その手段として思いついたものを「○○」と言って部下に任せるわけですが、この頭の中で考えている目的というのがそもそも間違っているor意味がないor必要がないということが往々にしてあります。
梅田さんのblogにある

明らかに最後の報告では必要ないはずの作業を命令されるということがありました。

というのが仕事の目的に意味がない、いい例です。


「なぜその仕事をしなければならないのか。」

これを常に自問し続けること。考えてもわからない場合には率直に上司に尋ねること
これができなければ、際限なく時間を無駄にしますし、無駄な仕事も減りません

「仕事の目的」を疑うことによる他のメリット


・仕事の目的を明確にすれば、その目的を達成するためにより合理的な手段が他にないかを検討することができます。(上に上げた3つのうちの2番目)
・仕事の目的を明確にすれば、その仕事を「自分が」やらなければならないのか、他に適切な人はいないのかを検討することができます。(上に上げた3つのうちの3番目)

僕の父親の話

僕の父親は専門学校卒業後、就職しました。大学へは行っていません。しかし誰もが知っている大企業に就職し、そこでのしあがり、途中で他の企業に引き抜かれて常務まで務めました。
(ちなみにこの引き抜かれて常務を務めた企業というのが同族会社で、経営陣親子と経営方針を巡って対立したことにより50代半ばで退職し、自分でまた会社を作って現在経営しています。)

どんな仕事のやり方をしていたかを聞くと、仕事上で自分が納得いかない点は上司であろうが徹底的に議論し、もし直属の上司では埒があかないと感じたらさらにその上の上司に直接夜中でも直談判しにいったりしていたそうです。

こんな仕事のやり方をする人間は、上司としては嫌でしょう。したがって何を問題にするか、どのような点について議論するかは慎重に考えなければなりません。
しかし本当に会社のためを思い、絶対に会社のためになるという信念と説得的理由を持って行動できる従業員は、経営者から見れば最高の従業員です。もし経営者に人を見る目があれば、このような人は必ず評価されます。


父は、僕の尊敬する人です。

「仕事の目的」の正当性の判断基準


仕事の目的の判断基準は、ただひとつ。

「その会社の経営理念・ビジョン」

です。

なお、ここから就活で自分が勤める会社を決める基準として、「自分のビジョンと会社の経営理念が合致しているか」を一番大事に考えるべきと言うことができます。
就活の際、きちんとこのことを考えて入社した会社であれば、その会社でやるべき仕事=自分のすべき仕事となるはずです。

就活時に自分のビジョンを持っていない、会社の経営理念なんて全く考えずに待遇だけで会社を決めた人なんかは、不満を持つようになり、落ちこぼれ、いずれ辞めていくことになります。



推測するに、梅田さんのblogのエントリーのタイトルが「世界観、ビジョン、仕事、挑戦――個として強く生きるには」となっているのは、以上の理由によるかと思われます。



ずいぶんと長くなってしまいました。

「できる人」の条件その2とその3は、またいずれ書いてみようと思います。